⑧
「決心はつきました?」
夕食時のレストランは賑やかだった。
皆が自分たちの話に夢中になり、骸たちの会話を聞いているものはいないだろう。
始めてきた店だったが、温かな雰囲気とパスタの味が綱吉はとても気に入った。
「…なにが?」
骸の話が唐突なのは今に始まった事ではない。
だてに子供の頃から一緒に育ったわけではない綱吉はパスタを咀嚼しながら聞き返すが、骸は意地の悪い笑みを浮かべるだけであった。
「なんだよ。」
口に頬張ったものをのみこんで、意地悪な笑顔を睨みながら綱吉はもう一回聞き返した。
「あなたの大事な主のことですよ。」
さらに骸は笑みを深くする。
すると、綱吉は「はぁ。」と深くため息をついてフォークを置く。
「そんな話をするために夕食に誘ったの?」
急に真剣な目になった綱吉の瞳に骸は思わず見入る。
悲しげな影を落とした瞳は、何とも言えず綺麗で何時も骸は自分だけを見てほしいと思う。
しかし、綱吉の中にはあの小さな主しかいないのだ。
「おれは、一生リボーン様に償いつづけるよ。」
いつも自分の後をピョコピョコ付いてきた綱吉を思い出しながら、骸は思う。
どこで自分たちの道は分かれて行ってしまったのだろう。
「あなたが悪いのではないのに?」
唐突に骸が発した言葉に ぴくりと、綱吉の肩が揺れる。
「…なに、言ってるの?」
先ほどまでの悲しげな影の落ちた綱吉の瞳に、恐怖心が見え隠れするのを骸は見落とさなかった。
「詳しく、言って欲しいんですか?」
綱吉は、骸の笑顔が怖いと久しぶりに思った。
まるで、何もかも見透かされて、今思っていることも全部知られているような錯覚に陥る。
「おれ、もう帰るよ」
そう言って席を立とうとする。
しかし、骸に腕を掴まれあっけなく席に引き戻される。
綱吉は抵抗しようと思ったが、こちらを見つめる瞳の真剣さに思わず動きを止めた。
「僕は、あなたが心配なんです。」
久し振りに聞いた骸の真剣な声色に綱吉は言葉を挟むことも出来ずに聞いた。
「あなたが悪いのでは無いじゃないですか。」
「あなたは助けただけだ。」
「悪いのはすべてあの・・」
「黙れ!!!!」
今度こそ綱吉は強引に手を払い、席を立った。
骸は、眉をしかめてそれを見送った
「あなたは馬鹿だ。」
「おそらく、彼はもうすべて知っているのに…。」
そのつぶやきは、もちろん綱吉には届かない。
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