沢田綱吉通称ダメツナ。
しかしこれはある意味愛称のようなもので、クラスメイトから嫌われている訳でもなく、友達もちゃんといた。
友達のだった人の名前はコロネロ。金髪蒼目の留学生。運動神経抜群で格好良く、しかしそれをはなに掛けることもなく、皆に慕われている。
この二人は友人だったのだ。
一週間前までは…
綱吉の好きな人は、学校のマドンナ笹川京子。それは、周知の事実で、もちろんコロネロも知っていたし、実は脈ありなんじゃないかとも思っていた。
友達の恋は応援する。そうコロネロはずっと思っていた。
すでに何度も二人の仲をとりもったこともある。
そのたび綱吉は頬を赤らめコロネロに礼をいって、京子と二人で帰ったりしていた。
だから考えてもみなかったのだ。沢田綱吉が本当に好きな相手など!
コロネロがそれを知ったのが一週間前。
部活帰りのコロネロは、夜の公園で一人ベンチに座っている綱吉を見つけた。
帰宅部であるはずの綱吉の格好は制服のままである。
しかも、今日は京子と帰っていたはずだ。
様子がおかしい事に気づいたコロネロは、そっと綱吉に近づいた。
「コロネロ…」
自分の名前が呼ばれてビクッとするがそれは
ニャー
と鳴く、綱吉の足元で鳴く猫に向けられたものだった。
綱吉はコロネロに気づかずに猫に話しかけた。
「コロネロ…お前は可愛いね。金色の毛並みに青い眼なんて本物にそっくりだ。」
暗くてよく見えないが、綱吉の足元にいる猫は、コロネロにそっくりな猫らしい。
自分に似ているという猫に話しかける綱吉の姿にどことなく恥ずかしくなり、コロネロは綱吉の前に出るタイミングを逃してしまった。
コロネロがそんな事をしている間に、綱吉は足もとから猫のコロネロを抱き上げると抱きしめてキスをした。
コロネロはそんな様子を見て、よくわからない気持ちになり、綱吉に見つからないうちに家に帰るかと、背を向けた。
「お前が本物のコロネロだったらいいのに・・」
その瞬間小さく聞こえた熱のこもった声にコロネロは背筋が粟立つような気がした。
『今、綱吉は何と言った?!猫を抱き上げキスをして、俺だと良いと言ったのか?』
コロネロは頭が真っ白になった。
その時、綱吉がこちらに気づいた。
綱吉も思わず立ち上がって、呆然とこっちを見ている。
「コ、コロネロ…」
「こっちに来るんじゃねぇ!!」
思わずコロネロは叫んだ。
それを聞いて綱吉が目を見開いた。視力の良いコロネロには目が潤んでいるのも見える。
しかし、止まらなかった。
「おまえ、俺のことそんな風に見てたのかよ!」
「ち、ちがッ…!」
「じゃぁ今のはなん何だコラ!」
「それは…」
綱吉は、黙った。
その沈黙がコロネロをさらにイライラさせた。
コロネロは綱吉の事を一番の友達だと思っていたのに、綱吉はコロネロに口づけたいとそう思っていたのだ。
そう考えると、コロネロの心の中で、モヤモヤした感情が爆発しそうだった。
沈黙を崩したのは猫であった。
にゃぁー
綱吉の足元にすり寄って甘えている。
くすぐったいのかその猫をちらりと見ると綱吉はようやく口を開いた。
「おれ・・コロネロが好きだ。」
聞いた瞬間コロネロは目の前が真赤になったように感じた。
「お前ッ…」
「ごめん、気持ち悪いよな…こんな事言って。」
綱吉は俯いた。
涙が頬を濡らしているのを必死に隠しているのがコロネロには解った。
「知られちゃったら、もう、友達には戻れない」
涙を必死に拭いながら綱吉はさらに続けた。
コロネロは何も返事をすることができなかった。
「今までありがとう…」
綱吉は無理やり笑顔を作ってそう言うと、走って公園から去って行った。
綱吉の足元にいた猫がコロネロをじっと見ている。
まるでコロネロを責めているような眼だった。
つぎ!