①
「おはようございます。リボーン様」
南向きに大きく空いた窓からは惜しげもなく太陽の光がはいる。
リボーンは決して朝が弱いわけではないが、こうして綱吉が起しに来なければ決して起きようとしない。
綱吉はそれがわかっているので毎朝何に変えてもリボーンを起しにくる。
着替えを用意し、タイを結ぶ。
が、その間リボーンは綱吉を見つめるだけで、何も言わなかった。
「何か俺に言うことはないのか。」
リボーンは用意が終わると痺れを切らしたように綱吉にいった。
すると綱吉は、少し笑って、
「おめでとうございます。我が当主」
リボーンは少し眉を顰めたが、フッと笑って手をさしだすと、綱吉は膝をつき、リボーンの手にキスを落とした。
今日はリボーンの10歳の誕生日であり、正式に家の主人に襲名する日であった。
両親のリボーンの両親は、リボーンの誕生日に屋敷に侵入した何者かによって殺された。それからは、リボーンの叔父にあたるザンザスがこの家を仕切ってきたが、正式には主人不在が5年間も続いていたのだ。
リボーンは元から優秀な子供であったが、両親が死んだあと、まるで何かに憑かれたように勉強をして、イタリアで一番といわれる大学の経済学部を首席で卒業した。
祖父からの遺言で、リボーンが大学を卒業したらこの家を継ぐことになっていたのだ。
綱吉は、そんなに急がず、もう少しザンザスに任せていたらいいのではないかと言ったが、リボーンは、少しでも早く家を継ぎたかった。
リボーンは朝食をとると、今日のパーティーの予定を確認し、ザンザスから受け取った書類に目を通していた。
傍には、綱吉が控えている。それだけでリボーンは気分がよい。
リボーンが学校に行っている間、綱吉はザンザスの手伝いをしていた。
綱吉は、孤児であったために、勉強など出来ない環境で育ったのだが、祖父に拾われた後に、様々な知識を身につけたそうだ。
自分がまだ生まれていないときの話である。
それから、自分の世話を任せられるまでの間、綱吉はずっとザンザス付きの執事だったらしい。
あの気難しいザンザスも綱吉のことを気に入っていたので、綱吉がリボーン付きになると言われた時は、祖父と大喧嘩になったそうだ。
全て、他のメイドや使用人に聞いた話だったので、リボーンは“あのザンザスが?”と、あまり信用していなかったが、二人が話している所を一度見たときに、あの話はほんとだったのだとわかってしまった。
それから、ザンザスと綱吉が二人になるのをどうしてか気に入らなかったのだ。
リボーンが早く家を継ぎたかった一番の理由はこれだった。
綱吉には絶対言うつもりはなかったが。
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