この日は夏が終わりを告げる8月最終日。でもコレはお前に会わなかったらの場合――――――――――。
夏がそろそろ終わりを告げようとしている。外から吹く風が心地よかった。
「…檜佐木副隊長、お疲れ様です。」
「お疲れ。書類はあと…」
三席が側にある書類を俺に手渡し、これが最後だと告げる。
「これだけか?」
「はい。今日はいつもより早く帰れそうですね。」
逆に俺が目を通し、判を押した書類を三席に手渡す。確かに、いつもはもっと遅くまで隊舎に残っている。しかし、今日の残りの仕事は今、
自分の手元にあるもののみ。見てみると資料が3つあるだけだった。
「そうだな。あ、一ついいか?」
俺はふと思い出し、三席に尋ねる。
「何でしょう?」
いつも言わないことを言うには勇気がいる。たとえ、どんな些細なことでも。
「えっと…明日、半日でもいいんだ。休みをもらえないか?」
三席がキョトン、としている。それもそうだろう、俺は普段、自ら休みを貰うようなことはしない。しかし、この日だけは特別。たとえ1分1秒でも
休みが貰いたい。
「珍しいですね…」
「だ、めか…?」
俺は不安に思いながら、三席の顔色を疑う。
「いいですよ。明日はゆっくり休んでください。檜佐木副隊長たまには休み欲しいって言ってくださいよ?」
俺たちばかり休んでいるんで、と加えて言われた。俺は三席に礼を言い、隊舎を出る。
さて、仕事が終わった後は忙しくなりそうだ。
とりあえず、仕事が終わり次第、家付近の店に寄り、買い物をしようと思った。
小麦粉、卵、砂糖を混ぜたものを機械の中に流し込み、ある程度温まったらあんこを入れる。
常にお金がない俺は今日もお金がない。そんな俺があげれるものといったら料理ぐらいしかないわけで。そのことを相談すると、乱菊さんが
現世土産だといい、魚の形をした鉄板のようなものを買ってきてくれた。挟んで作るらしい。
仕事をさっさと終わらせて帰ってきた俺は家の近くの店に寄り、お菓子の材料を買ってきた。乱菊さんにけーきと言うものを薦められたが、よく知らないものを作るより、俺はあいつの好物を作ったほうがいいんではないかと思い、こちらを作ることにした。中に入れるものは、黒あん
こと白あんこ。あとクリーム。店の中を見ていると抹茶の粉を見つけた。少し高かったが今回は特別。生地に混ぜてやろうと思う。
甘い香が俺の部屋に充満する。甘いものが苦手な俺、だがあいつのためなら我慢が出来るのは、きっと、気のせいじゃないはず。
「…できた…」
鉄板を開けると、そこには狐色の魚の形をしたたい焼きが現れる。
俺は嬉しくなり、自然と笑みがこぼれた。
喜んでくれたらいいなぁ。
俺は出来たたい焼きを箱に詰め、袋へ入れる。そしてもう一度家を出る。あいつに会いに行こう。いつも俺を好きだと言ってくれるお前に。ベ
タだけど12時ちょうどにお祝いなんかしたりして。俺は今日休みだ、なんて言ったりして。そしてこのたい焼きを渡そう。
最上級の愛を込めて。
8月31日を夏の終わりの日から特別な日へと変えてくれたお前に。
恋次、お誕生日おめでとう。
*あとがき*
恋次お誕生日おめでとう!!しうぺいにしろ恋次にしろ夏男だな!!笑 その熱さで二人ともずっとラブラブしてくれたらいいよ!!笑