俺はその場に待たせて、先程摘んできたあの花の束を持ってくる。枯れないようにバケツに水を汲み、その中へ大量の向日葵を挿しておいた。どうやら、向日葵はまだ枯れていないようで安心した。
「何なんだよ、恋次?」
「すんません…っと…これ…誕生日おめでとうございます。」
水がポタポタと落ちる向日葵の束を差し出す。ちゃんとお決まりの言葉も添えて。するとこの人は今、気付いたかのような顔をする。
「あ…そっか…今日俺誕生日か…」
隊舎を出るときに時計を見ると時刻は0時少し前だったはずだから、今はもう0時を回っているはずだろう。この人、修兵さんはポカンとしながら俺の手から大量の向日葵の花束を受け取る。
「だから…隊員たちが今日は休めって言ったのか…。」
そんなことを言いながら修兵さんは向日葵をゆっくりと顔に近づけながら香を嗅ぐ。
「なんで…この花なんだ?」
そっと顔を上げながら当然の疑問を口にする。
「あんたに…あんたに似合うと思ったから。」
「俺に?」
「あるものを先に見ながらそれに対して進んでいく姿が、太陽に向かって咲くこの花の姿に似ていると思ったから。」
修兵さんを知って、この花を見たとき、俺は真っ先に修兵さんのようだと思った。いつかいつか言おうと思っていたのだ。
「俺にこの花がねぇ…。俺はどっちかって言うとお前に似ている気がするよ、恋次お前に。」
一本向日葵を抜き、俺に手渡してくる。
「俺に!?」
思いもしなかった言葉が返ってきて、驚く。
「向日葵ってさ、芽が出始めの頃は人間の赤ん坊みたいに体が柔らかいんだ。だから太陽に向かって太陽が動くごとに体を動かすんだ。ど、成長して花が咲く頃になったら、人間の大人みたいに体が硬くなってんだよ。だから、花は太陽を向いて咲くわけではなくて、固定された場所しか向いてねぇんだ。けどこれってさ…お前みたいじゃね?一つのところをずっと見ているお前に。」
俺のほうを見ながら、この人はふわりと笑う。その笑顔はこの花よりも美しくて…。
「それって…」
俺がずっとあんたを見ているってこと…?ねぇ、修兵さん?
「ま、ありがとな。しかもこんなにたくさん。」
帰り道、修兵さんは始終浮かれていた。そこまで喜んでもらえると思っていなかった俺は修兵さんの喜ぶ姿を見て、このプレゼントにしてよかったと思った。
「近くに咲いてて、その土地の人に言ったら好きなだけもっていけって言われたンすよ。」
「へぇ~」
聞いているのかいないのか、修兵さんは向日葵を一本出しては眺め、収めてはまた違う一本出しを繰り返す。
「…あ、そう言えば俺も明日休みなンすよ。」
「へぇ~」
全く聞いていないがきっと今日は泊まっていけるだろう。この人の浮かれようからして。俺は修兵さんの横顔を眺めんがら、腰に手を回し、そ
っと耳元で囁く。
「修兵さん、大好きだよ。」
あんたのいる世界に俺が存在していてよかったって、今日ほど思う日はないよ。
HAPPY BIRTHDAY
そう言うと今までの浮かれた顔が一気に赤く染まった。その後、何も言わず修兵さんが部屋に入れてくれたことは言うまでもない。
さぁ、朝まで一緒に愛を語り合おう?布団の中で。
* あとがき*
わ~!おめでとうだよ~!!!しうぺい~!!!!!何歳になったんだい君は!?笑
向日葵のよく分からない豆知識は高校のときの生物の先生に教わりました。今、役に立つなんて!でも今思ったけどちゅうとかしてない!恋人同士なのにね!しまった!とりあえずこの後、こいつらは朝までしっぽりすると思います。ここでしなかったちゅうもたくさんしたらいいよ!笑
読んでくださってありがとうございますww
2008年8月15日 萌絵