知られてなかったことに結構傷ついている俺がいた。
「黒崎君お誕生日おめでとう!!」
いつも通りに学校へ行き、教室のドアを開けるとすぐ俺の目の前に井上を筆頭にたつきや啓吾、水色、チャド、そしてまさかの石田までもが
俺の方を見ている。
「は?」
「んもう!黒崎君!とぼけちゃって。今日は黒崎君の誕生日でしょ!?」
そう井上に言われて初めて気付く。今日は7月15日、俺の誕生日だ。
「そうだよ、何変な声出してんの一護。おめでとう。」
「あっもしかして忘れてたとか!?一護も抜けてんなぁ!!」
「おめでとう、一護。啓吾の発言は気にしなくていいよ。」
「一護、おめでとう。」
たつき、啓吾、水色、チャドが順々に祝ってくれる。こう皆に言葉にして言われると今日が誕生日であることをだんだん実感してくる。そういえ
ば、今朝、夏梨たちの様子が少しおかしかったかもしれない。
「…おめでとう黒崎。」
そして少し嫌そうに石田が俺に言う。そこまで嫌そうにするなら言わなきゃいいのに。
「もうちょっと祝うような顔してくれねぇ?」
俺が苦笑しながら言うと石田は顔を赤くして眼鏡のブリッジを上げながら「井上さんに強制されたんだよ。」と一言こぼした。石田までもを従
わすとは、さすが井上…。
「これ誕生日プレゼント!!」
井上がピンクの包装紙で丁寧にラッピングされた箱型のものを差し出した。
「これ…」
そっと手を出してその箱を手に取る。
「誕生日プレゼントだよ、ここにいるみんなからのね。」
「ただいま。」
「おっかえり~!!お兄ちゃん、一兄、お誕生日おめでとう!」
家のドアを開けるとすぐに夏梨と遊子が俺のところまでやってきて、手に持っていたクラッカーを玄関でならす。
「誕生日おめでとう~!!」
クラッカーの中の色とりどりの紙糸は俺の頭から肩の方に絡まる。
「サンキュ、な。」
俺は夏梨と遊子に両手を引っ張られて、クラッカーの紙糸をつけたままリビングへ移動した。
「いっちごぅ!!俺も真咲もお前が生まれたことを感謝してるぜぇぇ!!!!」
リビングのドアを開けると親父が椅子からダイブしてくる。いつもながらうざいおやじである。俺はそんな親父のダイブを避け、リビングへ入
る。
「お兄ちゃんおめでとう!!今日はお兄ちゃんが主役だからね!!」
机の上にはから揚げやサラダ、オムライスなど様々な料理が並んでいた。全部、遊子の手作りだろう。周りを見渡すと壁に折り紙で作られ
た輪っかが飾ってある。これはきっと夏梨が作ったものだろう。家族の温かみが感じられて少し、むず痒い気持ちになった。
「一兄、着替えてきてよ。おやじ!いつまでんなかっこうしてんの!!今日は一兄の日なんだからね!」
今日は去年より盛大な誕生日だったかもしれない、と思った。啓吾や水色やチャド、井上やたつき、そしてあの石田までもが。まさかと思っ
たが。夏梨と遊子の手作りのものも嬉しかった。いつもうざい親父は…いつも通りだった。満足しているはずなのに、心の奥はぽっかり空い
ていて…。
「…寝よ。」
いつもより1時間早くベッドに入る。ちっとも眠くないのに。気を紛らわすための手段である。馬鹿みたい、そう思った。
「一護!!」
「!?」
窓ガラス越しに俺を呼ぶ声がする。そっと窓の方を見ると暗闇と化した黒い服を着たあいつがたっている。暗闇でもよく映えるあの赤い髪を
した男―――。
「恋次…」
俺はベッドから降りて窓の鍵をゆっくり開ける。すると恋次は勢いよく窓を開け、少し照れくさそうに言った。
「誕生日おめでとう。」
「…おせぇよ、馬鹿。」
軽く拳で恋次の胸元を押した後、外で話すのもなんだから中へ入れる。
「でもさ…恋次、俺の誕生日…」
知ってたっけ?という言葉の前に後ろから抱きすくめられた。強い力で。ふわりと恋次特有の香りが漂ってくる。
「知らなかった…ごめん。ルキアに聞いて…それでっ…」
ぎゅっと腕の力が強くなる。知らなくてもいい。こう会いに来てくれるのなら…。
「別に、かまわねぇ…。」
「一護!あ、誕生日プレゼント!」
もう少し恋次の香りを楽しみたいと思った瞬間に恋次の方へ向かされる。誕生日プレゼントと言って差し出された恋次の手には数枚の紙。
「…“何でもします券”?」
その紙には荒っぽく“何でもします券 阿散井恋次”と書かれてあった。
「ぷっ!!あっははは!!!!何だよこれ!!」
予想外のプレゼントに俺は吹き出してしまう。恋次はというと恥ずかしそうにそっぽを向いている。
「ルキアから一護の誕生日聞いたのが今日の夜なんだよ!!もうどこも店閉まってなんもねぇし、それに急には決めたくねぇじゃん。っつー
か…嫌なら返せよ。」
「嫌じゃねぇよ、ありがとう恋次。」
少々、不貞腐れた恋次に背伸びをしてそっと口づける。軽い一瞬のキス。
「あ~…明日さ、ちゃんとしたもん買いに行こうぜ。俺、休みだし。」
再び腕を回され、恋次の方へ抱き寄せられる。俺の方が背が低いため、恋次の胸元へ顔がいく。少し体温の高い恋次の温もりは誰よりも一
番俺を幸せにする―――。
友達も家族も嬉しいんだ。でも俺にはやっぱりこいつの温かみが、匂いが、言葉が…必要なんだ。
「…恋次…悪ぃんだけど、俺明日学校だわ。」
「っは!?」
*あとがき*
一護おめでとう(^o^)/何歳になったのかな?んふふ!!高校生っていいね!若い!!当初の予定ではちゅうも入ってない小説だったから、それはさびしすぎる!!と思って入れたよ!!それでも軽いやつなんですが…。恋一難しいですね…おおぅ…もう一回勉強しなおしてくるよ…。
2007.7.15 萌絵