運命感じちゃいました☆

 

運命の人なんて、そんなのいるわけないって思った。でも、あの人を、あいつを見た瞬間、運命を感じた…。
 
 
 
「一護遅ぇよ!」
 
俺は現世からわざわざ、ある理由のために一護を現世から連れて来た。その理由とはただ一つ…
 
「お前が早ぇんだよ!だいたい何だよ?言いたいことって!」
 
告白するためだ…一護に…。あることを。
 
「しかもこんな急にここに連れて来てさ…。」
 
一護はいつもある眉間の皺をさらに深く刻み、文句を言っている。
 
「もうちょっとだって!な??」
 
俺はあまり機嫌の良くない一護を引っ張りながら、ある所へ連れて行く。
 
「あ!先輩!」
 
ある人を見つけて、手を上げた。すると向こうの方にいるあの人はこっちを見てゆっくり向かってきた。
 
「遅ぇぞ、恋次。」
 
「ごめんって!檜佐木先輩!」
 
ある人とはそう、九番隊副隊長檜佐木修兵である。俺は今日、一護に檜佐木先輩への想いについて相談しようと思っていたのだ。
 
「こっちはまだ仕事残ってんだぜ?…ってええ!?」
 
檜佐木先輩が俺に文句を言おうとして、こっちを見たと同時に、俺の背後から出てきたオレンジ色の髪をした一護に驚いた。
 
「そうそう、先輩待たせたのはコイツを紹介するためなンすよ。見たことありますよね?」
 
俺は一護の腕を引っ張って、俺の横に並ばせた。檜佐木さんはまじまじと一護を見る。
 
「あの…朽木の時の旅禍だよな…?」
 
先輩は間の抜けたような顔をしている。一方で、一護もいつもの態度とは違い、大人しくなっている。
 
「そっすよ。一護、こっちの人が檜佐木先輩だ。」
 
「…。」
 
何故か二人、黙りこくったままである。
 
「一護…?先輩…?」
 
不思議に思い、二人の顔を交互に覗き込むとハッと我に返ったようにお互いの体が反応した。
 
「ああ…あ…俺もう仕事戻んなきゃいけねぇわ…。」
 
「あっ、お疲れっす。」
 
パタパタと慌てて、先輩は隊舎へ戻っていった。
 
「すげぇ…キレイ…」
 
先輩の背中を見続けていた俺は、一護が呟いたそのセリフを聞くことはなかった。
 
 
 
「恋次ちょっといいか?」
 
扉が静かに開けられ、部屋に入ってきたのは一護だった。
 
「何だよ?」
 
「いや…そろそろ、帰ろうとは思ってたンだけど…」
 
いつも威張っている男が何だか余所余所しい。そんな一護に少し、俺は不安の影がやどった。
 
「あのさ…恋次がさっき言ってた、俺に話したいことって何?」
 
「ああ、あれか。でも一護もなんかあんだろ?先に言っていいぜ。」
 
本当は先ほど言おうとしていたのだが、何故か一護がボーとしていたために話す機会を失ってしまったのだ。しかし、離そうとする今も一護
 
の様子はどこかおかしい。そんな一護に相談するのも…と思い、自分の話より一護の話を優先させた。多分きっと、これがいけなかった…。
 
どうしてこの時、優先させてしまったのか…。
 
「あの…俺さ…」
 
ゆっくり一護は躊躇いがちに口を開く。
 
「今日会った…檜佐木さんのこと…」
 
この時、止めればよかったんだ。しかし、その時の俺はそのまま聞き続けてしまった…あの運命の言葉を―――。
 
「…あの人のこと…好きになってかもしれねぇ…」
 
…は!?一護は今、何っつった?先輩のこと…好…き?混乱しているせいか、口を開けたまま何も発せないでいる俺。
 
「マジで…びっくりした…。あんなキレイな人がいるとか思わねぇだろ…?何て言うかさ…運…命…感じた…?」
 
たーいーちょーおー!!!!!このクール気取りのクソガキ一護くんが何か言ってますよ―――!?うんめーとか言ってますよ!?しかも何、頬赤らめ
 
てンの!?つーか、俺もそれ言おうとしてたんだよ!?てめぇにンな顔して言われたら…俺は何も言えなくなっちまうじゃねぇか…
 
「わりぃ…今日中に済ませなきゃなンねぇ仕事あんだわ…」
 
一護からの告白に大きな衝撃を受け、嘘の言い訳をする。一護はそのまま、「わりぃな」と言って去って行った。俺が一護と同じ事を相談した
 
かったとは知らずに…。
 
 
 
一護が帰って1時間ほど、仕事なんてほっぽいてずっと考えていた。一護のあの表情…発したセリフが全て本気だ、ということを暗示させ
 
る。俺はうなだれたまましばらくじっとしていた。すると扉がゆっくり開けられる。
 
「恋次ちょっといいか…?」
 
俺の想い人は惜しくもアイツと同じセリフで、同じ表情で、同じ声のトーンで入って来た。
 
「先輩…。」
 
「今、いいか?」
 
「あ、はい。」
 
先輩が静かに畳の上に座り、あぐらをかく。そんな仕草まで綺麗だ、と思った。
 
「あのさ…今日会った黒崎ってやつ、また来るかな…?」
 
少し恥じらうように話す姿を見て、ああ、まさか…と勘付いてしまう。
 
「あいつさ…なんつーか…可愛いよな。」
 
もう言わなくていいです、先輩…
 
「でも、かっこいいとも思うんだ。」
 
可愛い後輩の傷を抉るような真似をしたくなかったら、それ以上言わないで…。何で、あんたはそんなにカワイイ顔してそんな残酷なことを
 
言うの…?
 
「何つーか…黒崎見た時、運…命…ていうの?そんな感じがしたんだ。」
 
先輩はまるで恋する乙女かのように頬を染め、俺に言った。
 
      朽木隊長…あんたの部下はしばらくの間、引きこもります…。
 
俺が「うまくいくといいっすね」と言うと、満面の笑みを浮かべて、「うん」と大きく頷いた。そんな姿までもを愛しいと思う俺が可哀そうで仕方な
 
かった…。
 
 
 
運命なんてお伽噺のみたいなもんだって思ってた…。でも違ったんだ。あんたに会えて、お前に会えて、本当にあるってことがわかったんだ
 
――――。

 

 

 

                                                                                                  2008年6月13日                 萌絵