望む言葉は一つだけ

 

あの人は忙しい。わかっているけれど…、でも…やっぱり思ってしまうよ。
 
 
 
技局開発という所は他の隊とは違って、個人行動ばかり。虚が襲撃したときなんかは違うけれど、いつもは各々が各々の研究を好きなだけ
 
やっている。そんな所で働いている俺の想い人はその通り、個人プレーが好きな人。俺とは真反対の人。
 
 
 
「吉良、恋次、飲みに行こーぜー!!」
 
昼食中、俺は吉良と恋次を見つけ、仕事帰りにお酒を飲みに行こうと誘った。吉良は「またですか?」と言い、恋次は「いいっすね!」とのってき
 
た。
 
「じゃ、いつもんとこで。」
 
こいつらとはあの院生時代の事件から、ずっとつるんでいる。また、お互い、副隊長という同じ役職なため、話も合う。他の人と飲んだり、話
 
したりするのも楽しいが、やはり一番落ち着くのはこいつらだと思う。
 
 
 
「それじゃあ、お疲れ!」
 
酒の入ったジョッキをならし、三人同時に口をつける。
 
「っはぁ!俺、酒好きでよかったって思う時はこんときっすよ~!」
 
恋次がジョッキの半分の酒を一気に飲み、嬉しそうに話す。
 
「わかるわかる。始めの一口ってやっぱ違うもんなぁ…。」
 
「僕もそう思います。」
 
こうやって、気の合う仲間と酒を飲むことで日頃の鬱憤をはらす俺達は、それから今日あったこと、仕事のやり方などについて語った。する
 
と、吉良がフと寂しげな表情をする。
 
「…でも僕思うんですけど、騒げば騒ぐほど、一人の時がむなしいんですよね…。」
 
吉良も恋次も独り身。特に吉良なんかは元隊長・市丸ギンのうらぎりの傷がまだしっかりとは癒えていないのだ。確かに、陽気な気分で帰っ
 
ても待っているのは暗闇。その闇に包まれると一瞬にして酔いが冷めてしまう。
 
「…。」
 
三人の間に沈黙が流れる。
 
「飲もう!」
 
俺と恋次が共にジョッキを持ち、一気飲みをした。
 
 
 
あんたは平気かもしれないけど、俺は全然平気じゃねぇんだよ?一人っていうのがすごく怖くてあんたと一緒にいたいっていう想いを押さえ込
 
んでる。…案外健気だろ?俺。
 
 
 
「はぁ…飲みすぎた…」
 
おかしなテンションのまま酒を次から次へ飲んでしまったせいか、店を出たあとすぐ、吉良はその場で倒れこんでしまった。
 
「あ、修兵さん、いいっすよ?俺が連れていきますから。」
 
恋次が吉良を支えながら歩き出す。
 
「でも…」
 
恋次も相当な量の酒を飲んでいたはずだ。俺は心配そうに見る。
 
「いいっすよ、俺、酒強いんで。それに行くところあるんでしょ?」
 
「…おまえ…」
 
俺が言いかけようとすると恋次は「それじゃ、お疲れっす~」と言って吉良を連れて去っていった。恋次の後ろ姿を見送り、俺は恋次が去った
 
逆の方向に進み出した。
 
 
 
向かう先はもちろん、あそこ。仕事熱心なあの人がいるところ。涼しい夜風を浴びながら酔いを冷まそうとゆっくり歩こうとするが、無意識に
 
足早になる。意地張っても何にも面白いことなんてないな…。あの人は見た目より全然子供だから、折れるのはいつも俺。でも仕方がない
 
んだ、そんなことも気にしなくなるくらい好きなんだから…。隊舎が見えてきたので早歩きが駆け足へと変わる。早く、あなたに会いたいんだ
 
よ。
 
 
 
着いた先は技術開発、思い人は技術開発リーダー。入ってすぐあなたに言おう。きっとあなたは不機嫌な顔をするだろうけど、わかってるん
 
だ、本当は。嬉しいってこと。だから仕方ないから言ってあげる、あなたに構ってもらえなくて寂しいってこと。扉に手をかけてそっと開ける。
 
開けた瞬間にあなたが見えたら、すぐに駆けていって抱き締めて、そして言うんだ。毎日が寂しいって……。あなたは何て言ってくれる?怒
 
る?優しい言葉かけてくれる?それとも…、抱き締めて返してくれる??ねぇ、阿近さん―――??
 
 
 
 
 
 
*あとがき*
69の日第2弾です。…阿修ですよね…?聞いてみる。なんかもっとこう、しうぺいが愛されてるのを書きたかったはずなんですけど…あれぇ??愛されてるかなぁ…?愛されて…るよね?うん、愛されてる!!愛されてる愛されてる!!よぉし!この調子でバンバン頑張ろうとか思っています。んふ。