「っ修兵さん!!大丈夫ですか!?」
扉が外れてしまうんではないか、と思うほど強く扉が開けられた。開けた本人は扉のことなど一切目もくれず、一直線に俺の方へやってき
た。
「恋次…?」
驚いて、目の前にいる恋次が本物かどうかがよくわからない。そんな俺が癇に障ったのか、恋次は舌打ちをした。ああ、また面倒くさいことを
させてしまった…と思い、顔をそらす。
「ごめん!!修兵さん!!」
一瞬、何が起きたのか分からなかった。筋肉が適度についた太い腕が俺の頭と背中に回り、胸元へ抱き寄せられる。嘘だ、って思った。こ
んなにも恋次は俺を温かく抱き締めてくれるはずがない。
「大丈夫ですか!?気持ち悪くねぇ!?吐き気は!?つーか…泣かせてごめん…。」
ぎゅぅっと腕の力が強くなる。止めようという意識とは逆に、ポロポロと流れる涙は恋次の死魄装に薄く染みを作っていく。抱き締められて、心
配されて、やっぱり俺は恋次のことが好きなんだと、いつも一緒にいたいんだと実感した。
「…何で飲みに誘わねぇんだ…。」
ある程度、落ち着いたため俺はふてくされたような声で乱菊さんとの会話を思い出した。
「えっ…あ~…」
「何でヨソヨソしい態度とってんだ…。」
「あ~…」
「何で家にこねぇんだよ!?んむっ!?」
我慢していた怒りをぶつけるように叫んだ途端、俺の唇は塞がれた。扉が開けっ放しだとか、外に乱菊さんがいるかも…とかどうでもよかっ
た。俺は重ねられた唇をむさぼるかのようにキスをした。背中にまわされた手の温かさを返すかのように、そっと俺も恋次の首元へ両腕を回
す。何度も何度も角度を変えながら、深く甘ったるいキスを繰り返した。
「ン…はっ…はぁ…恋…」
「ン…ごめんね、修兵さん?」
俺の唇を名残惜しそうに舐めながら、呟いた。
「俺がよそよそしかったのは、先輩との仲を周りに知らせないため。周りに知られたら…先輩に迷惑かかると思って…。」
「飲みに誘わねぇのは?」
「酔って先輩にベタベタくっつくと思って…。」
「…じゃあ…」
「家に行かなかったのは、ずっと先輩にくっついて、嫌がられると思ったから。」
…馬鹿じゃねぇの…泣いて損した。
「…好きなら…好きならもっとくっついてこいよ!俺の恋人だ、っつって周りに言いふらせよ!惚気ろよ!好きなら…好きならもっと好きだって…体
で表現しろよ!!」
もっと俺に分かりやすく表してほしい、好きっていう思いを。そうしたら、俺もそれ以上に表すから。情けない顔で俺を見ていた恋次の顔がパ
ッといきなり明るくなる。
「じゃあ…明日から言いふらします。」
「は!?」
「俺の恋人はかわいいかわいい修兵さんだ、って言いふらします。もう、俺すっげぇ言いたくて言いたくて我慢してたんすよ!?よかった!許可
下りて!なら、飲みにも今度から誘いますね!じゃんじゃん酔ってください。介抱してあげますんで。」
にっこりと笑う姿は、今まで情けない雰囲気を出していた姿とは全く違った。
「修兵ぇ、大丈夫!?」
乱菊さんが部屋へ慌てたように入ってくる。
「らんっ!?」
「慌てて恋次に言ったんだけど!…ってあら、お取り込み中?」
乱菊さんは俺達の抱き合っている姿を見ると、顔に笑いを浮かべた。
「ちょっ!!れんじ!!はなせ!!」
俺は必死で恋次の腕をどけようとするが、如何せん、体格差がある。がっしりと掴まれた腕はピクリともしない。また向こうから来る乱菊さん
の視線を痛いほど浴びている。
「いやです。」
「は!?」
そんな俺の心境を知ってか知らずか、俺を抱きしめる腕はいっこうに緩まることはない。
「だって、もっとくっついてて欲しいんすよね?」
そう言って俺の恋人はニヤリと笑って意地の悪い顔をした。
*あとがき*
しうぺいの日、ということでフリー小説第一弾です。第二弾はまた後で…。でもちゃんと69の日内であげます。でも、何でなんだろう?私の書く修兵さんは弱弱しい感じマックスですよね!なんで…?恋次視点だとそういうこともないんですが…。とりあえず…UPできてよかった!!
2008.6.9 萌絵