「れんじ…おれじゃま?」
「邪魔じゃないっすよ。」
「ほんと?」
「ほんと。」
「じゃぁ、もっとこっついてもいい?」
「いいっすよ。」
そう言うと先輩は体の向きを変え、俺と先輩が向き合う形になった。
「先輩、ちゃんと食ってます?」
「…たべてる。」
「ちょっと間があった。」
「たべてるよ!」
「ほんとっすか?」
「ほんとだよ…いたいいたい!!」
俺は先輩のおでこに自分のおでこを押しつける。
「れんじのばか。」
「馬鹿ですよ。」
そいって先輩の華奢な体を抱きしめる。
先輩がこんなに甘えるのは珍しい。よほど仕事で嫌なことがあったんだろう、と思った。
先輩は休むことを知らない。というか自分の限界を知らない。そのせいでストレスの捌け口を見失う。なんでこの人がこんなに無理をした生
活をしているのかはわからない。まるで誰かを追っているような…。先輩は誰にも弱音を吐かない。大丈夫と言っているけど俺から見たら全
然大丈夫じゃない。だから…だから俺はこの人の捌け口になりたい。どんなにぐちゃぐちゃにされてもいい、この人になら。俺にとってこの人
はすべてだから。欲しいものは欲しいと、甘えたいときは甘えたいと言って欲しい。そうしたらすべてを俺があんたに与えてあげるから。
伝令機が休憩終了を知らせる。
「あ…。」
そっと先輩が俺から離れる。完全に離れたら、もう仕事のスイッチが入った先輩だ。俺は名残惜しい気持ちで先輩を見つめる。
「ありがとう…れんじ。」
そっと呟いた声が聞こえる。
俺はその言葉だけで充分だ。