私立瀞霊廷高等学校

 

 
 
ここは瀞霊廷高等学校。中高一貫、共学、全寮制学校である。クラスは各学年10クラス、生徒数は1200人を超える大規模な学校である。1200人を超える生徒たちは皆個性的である。この話はそんな個性的な彼等の生活をピックアップしたお話。
 
 
「そろそろ着替えたほうがいいぞ~!!てことで今日の朝練終了!!」
 
朝の体育館――。そこではさわやかな汗を流しながら学生たちが部活動の朝練習を送っていた。
 
「先輩!お疲れっす!」
 
190㎝に近い身長を持ち、トレードマークの赤髪を一つに束ねた男子学生・阿散井恋次がある1人の男子学生へ声をかける。
 
「お~ぅ、阿散井お疲れぇ。」
 
その男子学生とは180㎝の身長を持ち、黒髪短髪、頬には69の刺青と右目下にラインの刺青が入っている。また、左顔には三本の大きな傷跡
 
がある。その学生の名は檜佐木修兵、この学校の2年生だ。修兵は白のタオルを首にかけ、恋次にのほうをむく。
 
「お前、朝練すんのはいいけど授業中寝んなよ。」
 
「…なんで知ってんすか…。」
 
2年の修兵が1年の恋次の授業を覗くことは不可能だが体育以外赤点常習犯の恋次のことだ、きっと授業中は眠りこけているだろうと修兵は簡
 
単に想像できた。
 
「お前のことはお見通し。あっ!ほかの授業もそうだけど、化学は特にちゃんと聞けよ。」
 
人差し指を立てて恋次の鼻に近づける。
 
「なんでですか…。」
 
修兵のその行動にドギマギしながら恋次が答えた。
 
「そりゃ、阿近先生がかっこいいからだろ!」
 
 
  「どうかしたのかい?阿散井くん・・・。」
 
金髪の髪の毛が左目を覆い、人良さそうな顔の男子学生・吉良イヅルが教室に入ってきてすぐに不審な顔をした。
 
「あ~とこれは…。」
 
恋次の代わりに答えた男子学生・黒崎一護はオレンジ色の髪の毛をしていて、常に眉間にしわが寄っている1年生だ。
 
「おはよう、黒崎くん。また、檜佐木先輩と何かあったのかい?」
 
答えた一護に笑顔で挨拶をし、呆れた口調で恋次に話しかける。
 
「それがさ…。」
 
早く自分のクラスへ戻りたいと思いながらも腕にひっついて離れない大きな子供のことも気にかかるため、動けずにいる一護を哀れに思う吉
 
良。
 
そもそもこうなったのは、一護が今朝学校へやってきてすぐに恋次と出会ったのが始まりだ。寮で同室の二人だが、恋次が朝練のため一緒に登校することはなかなかない。一護は恋次に声をかけた。すると一護の存在に気づいた恋次が雪崩こむように一護に寄りかかった。一護は驚いたがとりあえず、ひこずるようにして2組まで恋次を連れてきた。そこで恋次から事情を聞いたのである。
 
「…てのが朝練の時あったらしい。」
 
内心馬鹿らしいと思いながらほっておけないのが一護のいい所であり、悪い所である。吉良は一護から聞くとますます顔を歪める。
 
「何て言うか…馬鹿らしいね…。」
 
「馬鹿らしくねぇ!!!」
 
落ち込んでいたはずの恋次がいきなり顔を上げた。
 
「な…な…。」
 
驚いた吉良と一護が思わず、後ずさる。
 
「先輩は俺と付き合ってんのに何で阿近先生かっこいいとかなるわけだよ!?おかしくね!?おかしいよな!?吉良!!!!」
 
「え!?僕!?」
 
急に振られた吉良が焦る。恋次は必死で尋ねる。
 
「あ~!!!!俺って先輩の彼氏じゃねぇのかよ!!!」
 
「阿散井くん、そんな大声出したら二度と大声出せなくする、じゃなくて声枯れちゃうわよ?」
 
叫びながら机に伏せる恋次へ強烈な一言が浴びせられる。その一言を発したのは…
 
「ひ…雛森」「ひ…雛森くん・・・。」
 
雛森桃。背は低く、愛嬌のある顔をしている。しかし、彼女の浮かべる笑顔には少し怖いものが感じられる時がしばしばある…。それを感じとっ
た一護と吉良は顔を青ざめる。
 
「廊下まで聞こえたわよ?阿散井くん。もう少し静かにしなきゃ、皆に迷惑だよ?」
 
『はい…。』
 
さっきまで叫んでいた恋次は冷や汗をかく。
 
「っあ!雛森来たってことはルキ…」
 
「一護―――――!!!!」
 
一護が我に返り、雛森に問いかけようとしたその時、思いっきりドアが開けられる。
 
「ル…ルキア…。」
 
「さぁ、準備しろ!行くぞ!」
 
朽木ルキア。背は低く少々高校生には見えない風貌だが、顔立ちは整っており、家が金持ちなためか口調もかしこまっている。しかし性格はお
転婆そのものである。
 
「はっ!?ちょ!?」
 
ずかずかと入り込んでルキアは一護の首根っこをつかんでひこずる。
 
「あ…朽木さんおはよう…。」
 
「ルキア…おはよ…。」
 
「ルキアちゃんおはよ~」
 
吉良と恋次はあまりの展開の早さにたじろぐ。雛森は笑顔で挨拶をした。
 
「ご機嫌麗しゅう。」
 
にっこりと笑い、片手でスカートのすそを持ち上げる。
 
「それでは皆さん。」
 
そう言ってルキアは一護をひこずるまま1年2組の教室から出て行った。
 
 
 
 「毎日毎日めんどくせぇ…。」
 
「何か言ったか?一護。」
 
「なんにも。」
 
二人が向かう先は国語科準備室。国語科教師が集まる場所だ。ルキアは毎日毎日、兄白哉のもとへ、無事に学校に着いたことを報告している
のである。それは兄白哉が極度のシスコンであるからだ。
 
「はぁ、ま、いいや…失礼します…。」
 
一護が国語科準備室のドアを開ける。
 
「朽木せんせ…!?」
 
開けた瞬間、目に入った光景に驚き、一護はすぐさまドアを閉じた。
 
「一護!?何をしておる!?」
 
ルキアは後ろから背伸びをしながら中を覗こうとする。
 
「いや…朽木先生いねぇっぽいぞ…。」
 
目を泳がせながら何とかルキアを中に入れないようにする。一護が見た光景とは、ルキアの兄であり古文漢文教師である朽木白哉がなぜか、
図書室の先生である四楓院夜一に雁字搦めにされていたのだ。それを見せないためにも一護は必死でドアを死守した。すると、中から白哉の
声がする。
 
「入ってこい。」
 
「兄様!!」
 
ルキアは白哉の声に反応し、すぐさまドアを開けて白哉のもとへ行く。一護も恐る恐る中を覗くと白哉だけになっていた。
 
「よし、今日も真面目にするんだぞルキア。」
 
「はい!!」
 
拍子抜けした一護はルキアと白哉の会話を聞きつつ、教室へ戻ることにした。

 

 

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